相続対策の概要
1.相続財産・債務の状況把握
どのような財産があり、それらの財産の相続税評価額はどうなるのか?
まずは、相続財産・債務の概要と相続税の予定額を把握する事が大切です。
● 現預金の状況
現金・預貯金は一番、分配・納税しやすいです。そのため、どのくらいあるかを把握する事が大事です。
ただし、相続税に関してはそのままの金額で課税されますので、現金預金に余裕がある場合には、
生命保険、一般贈与や不動産活用などの検討が有効です。
● 不動産の状況
どんな不動産があり、その不動産の相続税評価額はどうなっているかを把握しておきます。
更地や駐車場用地よりも賃貸アパートや賃貸マンションの敷地の方が評価減を適用できるため、評価額は下がります。
ただし、アパート経営や不動産価値の下落などのリスクがあることに要注意です。
● 債務の状況
借金は、相続の対象として「債務控除(マイナス)」することができます。
遺産を相続する場合、財産だけでなく借金やローンのマイナスの財産も引き継ぐことになります。
借金の額によっては、遺産だけで返済できない場合もあるでしょう。相続するかどうかは、次のような条件で選択できます。
- ①単純承認
- すべて相続する→通常の相続
- ②限定承認
- 相続した財産の範囲内で、債務の返済を行う。
マイナス財産の方が多い場合には、不足分は免除となります。
相続開始から3カ月以内に相続人全員の合意により、家裁に手続きする。(撤回不可)
- ③相続放棄
- すべての財産を相続しない。
相続開始から3カ月以内に家裁に届け出る。(撤回不可)
2.相続人の状況把握
● 相続人の状況
法定相続人がだれかを把握しておきます。
今すぐに相続が発生した場合の「基礎控除額*」を頭に入れておきます。
*平成27年より基礎控除額が引き下げになりました。また、子供がいない場合には、両親や兄弟姉妹が相続人になる可能性があります。
● 配偶者の有無
配偶者が相続する場合には、「配偶者の税額軽減*」を受けることができます。ただし、申告手続きが必要となります。
ただし、2次相続の税負担も考慮して考えないと、トータルでの税負担が増えてしまう場合もありますので、注意が必要です。
*「配偶者の税額軽減」配偶者が取得した財産が、法定相続分又は1億6千万円のいずれか大きい金額以下の場合には、相続税はかかりません。
3.相続税試算シミュレーション
相続財産・債務と相続人の状況を基に、現在、相続が発生した場合の相続税試算シミュレーションを行います。
この試算シミュレーションを基に、お客様の状況に最適な対策をご提案いたします。
4.相続対策例
ご提案できる相続対策は、お客様の状況によって異なります。相続税試算シミュレーションを基に、お客様の状況に最適な対策をアドバイスいたします。
ここでは、一般的な対策例の一部をご紹介いたします。
下記の対策例は、平成27年3月時点の税制(改正予定)に基づいて掲載しております。
具体的な対策時には注意が必要ですので、必ず所轄税務署・税理士等にご確認ください。
● 居住用の土地の80%減額
マイホームが330㎡以下*なら、以下の相続者に対して、相続時の評価額を80%減額できる可能性があります。
*平成26年12月31日までの相続については、240㎡
①配偶者
②同居の親族
③持ち家なしの別居の親族(相続開始前3年以内に持ち家を所有していない)
● 贈与税の配偶者控除
2,000万円以内であれば、以下の条件で配偶者に住宅やその土地を非課税で贈与できます。
①「婚姻20年以上の夫婦間」での贈与
②「居住用不動産 or その取得のための資金」の贈与
● 生命保険の非課税枠
法定相続人の人数に応じて、保険金の非課税枠を利用できます。
※平成23年度の当初の改正案では、非課税の適用を制限することとされていましたが、見送りとなっております。
「500万円×法定相続人の数」→非課税
● 墓地、墓石は非課税
墓地、墓石、仏壇などは相続財産に含まれず非課税となります。
購入予定があるようでしたら、自分で生きているうちに手に入れた方が良いでしょう。
ただし、借入金で購入した場合には、その借入金も債務控除はできません。
● 贈与の非課税枠
贈与の非課税枠(110万円)を使って現預金を減らすと効果があります。
ただし、死亡の3年以内に法定相続人に贈与した財産は、相続税の対象になります。
その点で、孫への贈与は二次相続にも有効です。(孫への贈与は、死亡の3年以内の贈与であっても課税対象額に含まれません。)
ただし、「あげすぎ」には注意してください。
老後は、生活費以外にも、マイホームの修理維持費用、治療費、介護施設への入居費用などいろいろと費用がかかるものです。
そのような老後資金まで贈与してしまっては、本末転倒です。これらを自己資金で賄えるように検討してから贈与を検討すべきです。
● 教育資金の贈与
30歳未満の子や孫に教育資金として、父母から子供へ、又は祖父母から孫やひ孫へ、
教育資金として贈与する場合、1,500万円までが非課税になります。
※平成25年4月1日〜平成31年3月31日(平成26年度改正で延長)
● 結婚・子育て資金の贈与
個人の結婚・子育て資金の支払いに充てるためにその直系尊属から、金融機関に信託等された金銭等については、
受贈者1人(20歳以上50歳未満の子や孫等)当たり1,000万円まで贈与税が非課税となります。
※平成27年4月1日〜平成31年3月31日までの間の贈与
● 遺言書の作成
争族対策に最も有効なのは、遺言書作成です。
遺言は、被相続人の意思表示であり、法定相続より優先されます。
ただし、相続人全員の合意があれば、被相続人の指定に従わず、
相続人全員での「遺産分割協議」により遺産の分割を決めることができます。
遺言があれば、法定相続人以外の者にも遺産を遺せる。これが「遺贈」です。